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COP(Conference of the Parties)とは

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)は、1992年の「気候変動枠組条約(UNFCCC)」に加盟する197 か国・地域(締約国)が一堂に会し、条約および関連する法的文書の実施状況を評価し、地球温暖化対策の次の一手を意思決定する最高機関です。毎年開催されるため、COPの数字がその年の国際気候交渉の“名刺”になります。

設置根拠と役割

UNFCCC第7条により設置されたCOPは、①条約の実施を検討・強化する決定の採択、②温室効果ガス(GHG)排出削減目標や資金メカニズムの設定、③科学的知見の反映、④事務局・補助機関の監督――など幅広い権限を持ちます。またCOPの場で、京都議定書(CMP)やパリ協定(CMA)という派生会合も同時開催され、複層的に交渉が進みます。

COPの歴史と主要合意

1995 年 COP1(ベルリン)~2001 年 COP7(マラケシュ)

1995 年のCOP1で「ベルリンマンデート」を採択し、先進国の具体的削減目標づくりを本格化。1997 年COP3(京都)では京都議定書が誕生し、先進国に法的拘束力ある数値目標を課しました。2001 年COP7では「マラケシュ合意」で京都メカニズムの詳細ルールが固まり、議定書発効への道筋が整いました。

2009 年 COP15(コペンハーゲン)〜2015 年 COP21(パリ)

COP15では法的合意に至らず「コペンハーゲン合意」という政治文書にとどまりましたが、途上国支援のための年間1,000億ドル目標が初めて明記されました。2015 年COP21ではパリ協定が採択され、全締約国が参加する自主的削減目標(NDC)と「産業革命前比1.5 °C目標」が国際法上の枠組みに昇格しました。

2021 年以降 (グラスゴー→ドバイ→バクー→ベレン)

  • COP26 (2021, グラスゴー):石炭火力「段階的削減」を初めて明文化し、メタン削減誓約が立ち上がる。
  • COP28 (2023, ドバイ):初めて「化石燃料からの脱却」を全会一致で盛り込み、第1回グローバル・ストックテークを採択。各国は2030 年までに再エネ容量を3倍、エネルギー効率を2倍に引き上げる目標で合意しました。
  • COP29 (2024, バクー):途上国向け気候資金の新目標として「2035 年までに年3,000億ドル」を決定。長期的には公私合わせ1.3兆ドル/年を動員する数値目標が示されました。
  • COP30 (2025, ブラジル・ベレン予定):アマゾン流域の森林・生態系を交渉の主軸に据え、パリ協定第2回ストックテークの準備会合として位置付けられています。

COPの交渉プロセスと構造

主要アクター

交渉は、議長国(Presidency)が全体調整を担い、利害の近い国が「交渉グループ」を形成して進めます。たとえばEU、米・加・豪などの環境整合性のための傘グループ、途上国のG77+中国、島嶼国連合(AOSIS)、新興大国連合(BASIC)などがあり、日本は環境整合性グループ気候野心連合に参加して交渉を行います。

補助機関と議題

COP本会合の下で、科学助言補助機関(SBSTA)と実施補助機関(SBI)が年2回の中間会合を含めて技術・制度面を議論します。ここで取りまとめた勧告がCOP採択決定の素案となり、閣僚級ハイレベルセグメントで最終交渉が行われます。議題は「緩和」「適応」「資金」「市場メカニズム」「透明性フレームワーク」など多岐にわたります。

近年の焦点トピック

化石燃料の段階的削減・脱却

COP28は「化石燃料からの移行を加速する」という文言を初めて採択し、各国にコールトゥアクションを提示しました。ただし「フェーズアウト(全廃)」ではなく「トランジションアウェイ」と表記が緩く、産油国と気候脆弱国の綱引きが浮き彫りになりました。

気候資金の拡大

途上国支援の年間1,000億ドル公約はようやく2023 年に達成されましたが、COP29はそれを大きく上回る年3,000億ドル目標に更新しました。さらに民間資金を含め1.3兆ドル規模の動員目標を掲げ、世界銀行改革や炭素市場の活用など資金ルートの多様化が論点となっています。

損失と損害(ロス&ダメージ)基金

2022 年COP27で創設が決定したロス&ダメージ基金は、COP29で正式に世界銀行内に暫定事務局を設置し、初年度60億ドル規模の拠出が確定しました。資金管理の独立性とアクセスの公平性が今後の焦点です。

日本の立場と取り組み

排出目標と交渉戦略

日本は2030 年度に2013 年度比46%削減、2050 年カーボンニュートラルを掲げ、先進国としてアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じたエネルギー移行支援を打ち出しています。再エネ拡大と同時にアンモニア混焼や水素技術も前面に押し出し、「多様な道筋」をキーワードに交渉の橋渡し役を担う方針です。

まとめ

COPは条約誕生から30 年を超え、京都議定書・パリ協定という二つの大きな転換点を経て、いま「実行と資金」のフェーズへ移行しています。化石燃料依存からの脱却、巨額の気候資金、ロス&ダメージ救済――課題は山積みですが、COPは依然として国際社会が気候危機に立ち向かう唯一の“グローバル議場”です。企業や自治体、市民もCOPの決定が示す方向性を読み解き、脱炭素戦略を加速させることが求められています。


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