
JCM(二国間クレジット制度)とは
JCM(Joint Crediting Mechanism)は、日本とパートナー国が署名した二国間協力文書に基づき、途上国等で実施した脱炭素プロジェクトの温室効果ガス(GHG)削減・吸収量を両国で分け合うクレジット制度です。日本は自国のNDC(国別目標)達成に活用すると同時に、パートナー国の排出削減と持続可能な開発に貢献します。パリ協定第6条2項(国際移転型ミティゲーション成果=ITMO)の実運用例として国際的に注目されています。
パートナー国と対象範囲
2025年4月時点で、29 か国(モンゴル、ベトナム、インドネシア、ケニア、メキシコなどアジア・アフリカ・中南米を網羅)がJCMに参加。優れた脱炭素技術・製品・システム(高効率発電、再エネ、省エネ、冷媒低GWP化、森林吸収、CCUS等)が対象です。}
制度の仕組み
プロジェクトサイクル
①PIN/PDD作成 → ②両国の共同委員会が方法論承認 → ③第三者機関による妥当性確認 → ④プロジェクト登録 → ⑤MRV(測定・報告・検証) → ⑥クレジット発行・分配――の流れで実施されます。
クレジットはJCM Registryに記録され、分配比率はプロジェクトごとに合意(一般的に50:50が多い)。
ファイナンスとインセンティブ
日本政府はJCMモデル事業(環境省:補助率最大50%・上限20億円)やADB JF JCM基金などで初期投資を支援。
またNEDO実証事業やJICA技術協力と連携し、案件形成から運用までサポートします。
実績とインパクト
登録件数と削減量
2025年3月末までに292件のプロジェクトが登録され、累積削減・吸収量は約240万t-CO₂e/年、2030年までのポテンシャルは1億t以上と試算されています。
主なプロジェクト例
・インドネシア:高効率石炭火力をバイオマス混焼へ転換し、年間30万t削減。
・ベトナム:大規模屋根置き太陽光+蓄電池で産業団地を脱炭素化。
・ケニア:冷媒低GWP化&高効率コールドチェーンでフードロスと電力消費を同時削減。
多くの案件がSDGs(エネルギーアクセス、雇用創出、健康改善)の同時達成に寄与しています。
パリ協定第6条との整合
ITMO移転と相当調整
JCMクレジットはITMOとして国際移転されるため、両国はUNFCCCに
①相当調整(Corresponding Adjustment)
②二重計上防止
③環境整合性の担保――を報告します。日本は2024年に改訂MRVガイドラインを公表し、算定・報告フォーマットをArticle 6指針に完全準拠させました。
今後の拡大目標
日本政府は2030年までに1億t-CO₂eの削減・吸収をJCMで確保する目標を掲げ、対象技術をCCUS・DAC・ブルーカーボンへ拡張予定。2025年COP30までにパートナー国を35か国へ拡大し、ASEAN炭素市場との相互運用も検討中です。
まとめ
JCMは、日本の先端脱炭素技術をグローバルに展開しながら、双方のNDC達成とSDGsを同時に後押しする“ウィン・ウィン”市場メカニズムです。Article 6.2の実証プラットフォームとして得られた知見は、今後の国際炭素市場ルール整備に大きく貢献すると期待されています。

カーボンニュートラル検定のご紹介
カーボンニュートラル検定とは、カーボンニュートラルの考え方から経済的な取り組みまで、信頼性の高い知識を幅広く身につけることができる検定です。
「どこから勉強したらいいかわからない」という方でも安心して勉強できるよう専用テキストをご用意。
また、公式テキストを講義動画でポイント解説するカーボンニュートラル検定対策講座(テキスト教材付き)もご用意していますので、それぞれのペースに合わせた勉強方法が選べます。
-
mediaパリ協定6条(市場メカニズム)|カーボンニュートラル検定用語集パリ協定6条(市場メカニズム)とは パリ協定第6条は、締約国が国境を越えて排出削減効果を融通できる仕組みを定めています。 目的は、①世界全体の費用効率を高めると同時に②各国の削減目標(NDC)の野心を引き上げること。 主に 二国間・多国間でITMO*をやり取りする6条2項 と、国連管理の新クレジット制度である6条4項 の2つの市場メカニズムで構成されます。 *ITMO=Internationall […]
-
mediaパリ協定(Paris Agreement)|カーボンニュートラル検定用語集パリ協定とは パリ協定(Paris Agreement)は、2015年12月のCOP21(パリ)で採択され、2016年11月4日に発効した気候変動対策の国際枠組みです。 京都議定書と異なり、すべての締約国(現在197か国)に温室効果ガス(GHG)排出削減努力を求めます。 長期温度目標 協定第2条は「産業革命前比での平均気温上昇を2 ℃より十分低く抑え、1.5 ℃に抑える努力を追求する」ことを掲げて […]