
京都議定書とは
京都議定書(Kyoto Protocol)は、1997年12月に京都で開催されたCOP3で採択され、2005年2月に発効した気候変動対策の国際協定です。附属書Ⅰ国(先進国・経済移行国)に対し、法的拘束力のある温室効果ガス(GHG)排出削減目標を初めて課しました。対象ガスはCO2・CH4・N2O・HFCs・PFCs・SF6の6種と定義されています。
第一約束期間(2008‑2012)
37 か国+EUが1990年比平均‑5 %削減という共通目標を、国別に差別化した削減率で負担しました(例:EU‑8 %、日本‑6 %、ロシア0 %)。途上国(非附属書Ⅰ国)には数値目標を課さず、技術・資金協力を通じた緩和支援が位置づけられました。
フレキシビリティ・メカニズム
国際排出量取引(IET)
附属書Ⅰ国同士で排出枠(AAU)を売買する仕組み。排出削減を国内外の“最も低コストな場所”で実現する市場原理を導入しました。
共同実施(JI)
附属書Ⅰ国内で実施する越境プロジェクト。ホスト国は排出削減量をERUとして発行し、投資国が自国目標に充当できます。
クリーン開発メカニズム(CDM)
途上国で排出削減プロジェクトを実施し、得られたCERを先進国が取引・クレジット化する制度。開発利益の共創と低炭素技術移転を狙いに盛り込まれました。
コンプライアンスと透明性
コンプライアンス委員会
京都議定書は促進部門と執行部門の2分科から成るコンプライアンス委員会を設置。進捗遅延国に助言しつつ、未達成の場合は未達分×1.3を次期目標へ繰り越すなどのペナルティを科しました。
報告・審査制度
附属書Ⅰ国は毎年「温室効果ガスインベントリ報告書」を、途上国も隔年更新報告(BUR)を提出。専門家レビューによりデータ整合性がチェックされました。
成果と限界
排出削減パフォーマンス
EUや日本など多くの締約国は目標を達成しましたが、米国は2001年に離脱、カナダも2011年に議定書から脱退。世界全体の排出は経済成長とともに増加し、「先進国のみの枠組み」の限界が露呈しました。
価格暴落とメカニズム改革
CER・ERU価格は2012年以降急落し、市場インセンティブが弱体化。過剰クレジットや追加性批判を受け、パリ協定ではより厳格なArticle 6ルールへ移行することとなりました。
第二約束期間とドーハ改正
ドーハ改正(2013‑2020)
2012年COP18で採択されたドーハ改正は、EU‑20 %、オーストラリア‑0.5 %など新たな削減率を設定。必要批准数に達し、2020年12月に正式発効しました。
パリ協定への橋渡し
第二約束期間は実質的にEU+10 か国規模の限定的枠組みでしたが、排出計測・取引インフラをパリ協定へ継承し、今後の世界的排出管理の基盤を提供しました。
京都議定書のレガシー
京都議定書は排出量に価格を付ける発想と、国際的に検証可能な目標設定を世界に定着させました。現在のパリ協定や排出量取引制度(ETS)、炭素クレジット市場は、その制度設計・教訓を基盤に進化しています。今後も京都議定書の経験を生かし、より包括的で野心的な気候ガバナンスが求められます。

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