
パリ協定とは
パリ協定(Paris Agreement)は、2015年12月のCOP21(パリ)で採択され、2016年11月4日に発効した気候変動対策の国際枠組みです。
京都議定書と異なり、すべての締約国(現在197か国)に温室効果ガス(GHG)排出削減努力を求めます。
長期温度目標
協定第2条は「産業革命前比での平均気温上昇を2 ℃より十分低く抑え、1.5 ℃に抑える努力を追求する」ことを掲げています。
ネットゼロ(気候中立)
同目標の達成手段として、第4条は「今世紀後半(2050年頃)に排出と吸収の均衡=実質ゼロを実現」するよう各国に呼びかけています。
NDC(国が決定する貢献)
5年ごとの提出・更新
各国はNDCに自国の排出削減・適応行動を記載し、5年ごとに提出・更新して漸進的に野心を高める義務があります。
グローバル・ストックテーク(GST)
協定は5年周期で世界全体の進捗を点検(GST)し、各国にNDC強化を促します。第1回GSTはCOP28(2023年ドバイ)で終了し、「化石燃料からの移行加速」など強化信号を発しました。
実施・支援の枠組み
強化された透明性枠組み(ETF)
第13条は共通指標・報告書式で排出量と支援を報告し、専門家レビューを受けるETFを設置。途上国には能力に応じた柔軟性を認めつつ、データの一貫性を高めます。
資金・技術・能力構築
協定は「年間1000億ドル超の気候資金動員」継続と段階的拡大を決定。先進国は途上国の緩和・適応を支援し、技術機構とグリーン気候基金(GCF)などが実行主体です。
Article 6(協力的アプローチ)
第6条は国際的クレジット移転(ITMO)、市場メカニズム(Art. 6.4)、「非市場アプローチ」を明文化し、二重計上防止と相当調整を義務づけます。
COP26-28で実施ルールとレジストリ設計が合意され、各国・民間が活用を開始しました。
パリ協定の特色と意義
・ユニバーサル参加:すべての国が責任を持つ初の協定
・ボトムアップ+トップダウン:自主NDCと国際ルールを融合
・長期ビジョン:1.5 ℃目標と2050年前後のネットゼロ
・定期的野心向上:GSTと5年更新で“ラチェット機構”を形成
まとめ
パリ協定は「世界を1.5 ℃へ導く共通航路図」です。NDC強化・透明性・資金拡大・Article 6実装が進む2025年COP30(ブラジル)までに、各国・企業の行動を加速し、ネットゼロ社会への転換を現実のものにしていく必要があります。

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